東京 屋台ブラボー★ 連載第10回
東京 屋台ブラボー★ 連載第10回


暗い路地の奥の奥に、屋台風の鮨屋発見!

前回に引き続きの「築地」。朝からビールとモツ煮込みを喰らった
ラボー★隊は、会社に戻って5時間ほどデスクワークをこなす。
も頭のなかは夜の築地への期待でふくらむばかり。まともに仕事
できるはずがありません(こんなダメ社員ですみません)。アル
コー
ルの力で踊るようにふわふわと編集作業を終えて、日が沈む頃
に、
再度出陣!

待ち合わせのジョナサンに到着すると、築地王はすでにビールを飲
んでおられるではないか。「や!」片手を上げる王に、小さな闘争
を燃やしたあたくしは、ジョナサンだっていうのにビールを水代
りにごくごくと飲み干し、目的地へと向かいました。

「いっぷう変わった屋台風の鮨屋がある」
王のこの言葉、この日何度思い出したことでしょう(またしてもす
みませんダメダメ社員)。王から教えていただいた事前情報では
「う
どん屋」が経営している鮨屋なのだとか。しかも本店は京都に
ある創作料理店「虎杖(いたどり)」なんだって。
うどん???京都??? 虎の杖と書いて「いたどり」だなんて。
どういう意味があるのかな。経営者がタイガーマスク好きで「虎の
穴」からとってきたのかしら……などと思いながら王のあとをつい
て歩く。それにしても日が暮れた築地市場は朝から
昼にかけての活
気がウソのように静まりかえっているのね。

注)あとで調べてわかったことですが、虎杖とは、至る所に根を張
って芽を出すタデ科の植物の名前。この植物のように多くの拠点を
もち、お客とつながっていきたいとの願いが込められているそうで
す。タイガーマスクなわけないっすよね。

場外の細くて仄暗い路地に入り、シャッターの下りた店をいくつも
通り過ぎた先に、ぼんやりと足許を照らす行灯を発見。「ここが、
称“裏・虎杖”。築地の新鮮な魚貝たちや、創作料理で舌の肥え
た京
都のお客さんを満足させてきたセンスのよさで、これまで寄る
人の
少なかった夜の築地に新風を吹き込んでいるんですよ」
へぇー。中を覗いてみるとすでにお客で賑わっている。渋い内装で
なかなかよさそうな雰囲気だ。
「あ、でもこれから行くのはここじゃないよ」
え。築地王は構わずどんどん奥へ進む。
「ここ」
まわりはみーんなシャッターが下りているのに、そこだけ不自然な
くらいに営業中。もともとオープンエアなところ、防寒用のビニー
ルがかけられている。カウンター6席のみの、確かに限りなく「屋
台風」である。

提灯
路地入口の提灯が目印
飲み助の心をくすぐる小粋な肴が次々と!

さ、まずはエビスビール。缶で出されたものを各々黙ってグラスに注
ぐ。
「何かつまみをみつくろってください」
割烹着姿のご主人、うなずくとおもむろにまぐろを火で炙りはじめ
た。「鮨屋で炙りものなんて珍しいですね」なんてシロウトみたい
ことがつい口から出てしまった。
ご主人笑いながら、「こだわるのがキライなんですよ。高級なネタ
出す鮨屋はたくさんあります。鮨はこうじゃなくっちゃと思うお
様は、そういうお店に行かれたらいいと思います」
ぬぬぬ。このご主人、「こだわらない」という筋の通った哲学をも
ていらっしゃる様子。これは期待できますよ!

炙りながら、ご主人が説明してくれる。「これはまぐろのわかれ身
いう血合いのある部分で、炙って食べると美味しいんですよ」
手早く調理されて出されたマグロの炙り。にんにくポン酢に大根お
ろしでいただく。炙ったマグロの香ばしさとポン酢の爽やかさが口
いっぱいに広がる。ビールよりも日本酒が合いそうなオツな味だ。
続いて、同じくマグロをなめろう仕立てにしてくれた。エシャロッ
トのみじん切りが効いている。これまたオツ。
新鮮じゃないと臭みがあったりして、ホントの魚好きじゃないと苦
手だという人もいますが、このなめろうはそんな人でも食べられそ
うに新鮮だ。

ちょっと余談ですが、わたしはなめろう大好きっ子。背中の青い魚
であれば、なんでもたたいてなめろうに。酒のアテにはもちろん、
炊きたての白いごはんにのっけて、わしわしと食べるのもウマイ。
これから夏にかけては、真アジや真イワシの最盛期。新鮮なやつが
手に入ったら、ぜひお試しください。つくりかたは簡単です。細
かく刻んだ青魚に、ネギや生姜、ミョウガなどの薬味と味噌を加え
てねばりが出るまで(これがポイント)たたく。それだけ。以上、
ブラボー★漁師飯クッキングでした。

そのあと、穴子の肝のポン酢和え、甘海老と卵の和え物と酒飲みの
急所をつく小粋な肴が続き、ビールから日本酒に切り換える。山形
の純米酒(名前を失念。ごめんなさい)。
すぐ隣は築地市場。新鮮な魚はいくらでも手に入る環境にあって、
ご主人は「新鮮」だけに頼らず、ひとつひとつ手をかけて創意工夫
を施し、酒の肴にしている。それこそが料理人の心意気ってもんだ。

さてご主人、握ってもらいましょうか。まずはマグロから。頬張る
と、新鮮なマグロ独特の甘さが口の中に広がる。ほんのりあったか
いシャリとの相性もいい。「大トロですか?」と聞くと、「中トロ
すよ。大トロに近いとこですけどね」とご主人。この脂の乗り具
で中トロか。贅沢だね。続いて真ダコ。プリップリでこれまた新
鮮。
間で酒をくいっと。王は酒豪のようだ。わたしがくいっとやる
間に、
くいくいくいっと、やっている。ああ、この瞬間。うまし酒
とうま
し肴で杯を傾ける。ひとりでもよし、気の合う人と数人とで
もよし。
ささやかかもしれないけど、確かな幸せを感じる時ですね。
しみじ
みとおとなでよかったと思います。

「何か珍しいものありますか?」
「うーん、うちはこれだけの小スペースでやってるから、あんまり
ネタの種類を揃えられないんですよね」と恐縮しながらも、握って
くれたのはカワハギの肝のせ。淡泊な白身の魚に、クリーミィーで
濃厚な肝が絶妙です。

炙りマグロのポン酢おろし

なめろう
オツなつまみの数々。
なめろうはエシャロットがポイント

「築地黒瀬」店主
寿司の名店「つきぢ神楽」で腕をふるっていたというベテラン職人渡邊博行さん
中トロ
大トロなみの中トロ。
口のなかでとろけます〜♪
タコにぎり
プルプルの食感がたまらないタコ
赤身にぎり
マグロは赤身のほうが実は好きです
真アジにぎり
これからの季節がおいしい真アジ
シメはクリーミィーな絶品カレーうどん!

そして最後のシメに、虎杖の名物である特製カレーうどんを表店か
ら出前。メニューは虎杖表店、裏店にあるものを黒瀬に出前しても
らったり、逆に黒瀬から鮨を表裏店に出前することも可能なのだと
か。そのフレキシブルな感じがまたいいですね。
さてさて、このカレーうどん、名物料理なだけあって非常に個性的
で、蕎麦屋のそれとはまったく違う味。お昼どきにこのカレーうど
んと向き合うために、もう一度足を運びたいと思うほどでした。
まず驚いたのがカレーのつゆ。関西風のしっかりお出汁に、生クリ
ームを使ったクリーミィーなコクのあるお味。そこに、細めのしっ
かりコシのある麺がからまり、ずずずっとすすると、口のなかで麺
が元気よく踊る感じ。カレーのまったり感とのびやかな麺との出会
い。いやー、あっぱれ。

小さな店がゆえに、メニューの豊富さは期待できない。でも、ご主
人の酒飲みのツボを心得た創意工夫と、気さくな雰囲気で最後まで
飽きることはない。また来よう、そう思える店はそうそう数あるも
のではないが、わたしにとってこの「黒瀬」はその稀少な店となり
そうだ。

最後に築地王さま。朝から晩までよっぱらい女子につきあってくだ
さってありがとうございます。すばらしき築地の名店の数々と奥深
い築地ワールドを教えてくれて、本当に勉強になりました。わたし
も築地王ジュニアをめざして築地道に励みます!

カレーうどん
濃厚な味わいが初めての出会い。
絶品カレーうどん



味     ★★★★
      ネタに頼らない創意工夫のなせる技
お酒    ★★★
      種類を求める人には満足できないでしょう
ひとり飲み ★★★★★
      次はひとりでおじゃましよう
雰囲気   ★★★★
      築地の夜は静か。しみじみ酒を飲むのにイイ
女子的気軽 ★★★
      わいわいよりしっぽり飲みたい方にオススメ



提灯
虎杖姉妹店
「築地黒瀬」
東京メトロ築地駅から徒歩5分。
新大橋通りを築地市場方面に歩き、
中華そば若菜の手前の路地へ入った奥。
住所/東京都中央区築地4-9-7
     中富水産ビル1F
鮨(100円〜)、特製カレーうどん(800円)
エビスビール(550円)、日本酒(550円)、
吟醸酒(700円)





情報提供お願いしま〜す♪
みなさんの“ブラボー★”な屋台・立ち飲み屋・ガード下のお店をご紹介ください。
また、「東京 屋台ブラボー★」へのご意見ご感想をお寄せください。
お待ちしてます!


東京屋台ブラボー★vol.11へ
東京屋台ブラボー★vol.9へ