◆今夜はどこに寄っていこうか。
 そんな楽しみがガード下の魅力ね


気がついたら2005年。気がついたらもう2月。マヌケなタイミ
ングですが、みなさま今年も「東京屋台ブラボー★」をどうぞよろ
しく、贔屓にしてくださいね〜。

さて、今年一発目に行ってきたのはガード下。このコラムの対象に
なるのは、屋台、立ち呑み、ガード下。そのうち唯一未開拓だった
のが「ガード下」。頭の上を通る電車の音をききながら、赤提灯で
杯やる……。ちょいとリーマン的な悲哀を感じさせるのが、いい
じゃなぁい?

ガード下といえば「有楽町」「新橋」あたりが即浮かぶと思います
が、
そこはブラボー★隊。ありきたりのところには行きやせんぜ。
と、
われわれがチョイスしたのは「神田」。

神田駅って、街の区画をまったく無視して、斜めに線路が走ってい
るので、駅の周辺に三角地帯やへんな形の建物が多いんですよね。
都市計画のことなどまったく知識のないわたしが見ても、もちょっ
と美的景観とか都市の機能性とかを考えたほうがいいんちゃう? 
って思っちゃうくらい、駅周辺の街並みはごちゃごちゃしていて、
美しいの正反対にあるようなルックス。高架を支えている鉄骨はむ
き出しだし、煉瓦の壁はくすんで薄暗い。

そんな「神田ガード下」ですが、いや、そんな雰囲気だからこそ、
というのかな。夕暮れどきともなれば、界隈にお勤めのオヤジたち
が今夜の止まり木を探しにやってくるのでしょう。きっと彼らにと
っては、ガード下の舗道にせり出した店から漏れる灯りや、粗末な
テーブルを囲む人々の背中が、ホッとできる聖域なんですね。それ
はまるで、深夜のコンビニの煌々とした明るさにふらふらと入って
しまう心理と似ている。
実際、神田ガード下を歩いてみると、わたしもついついふらっと立
ち寄りたくなる「いい顔」した呑み屋がいっぱいでした。

今回も、スペシャルゲストをお呼びしましたよ〜。
イラストレーターの平尾香さん。担当書籍『ムーン・スパ』のカバ
ーと本文に、ミステリアスでオリエンタルなイラストを描いてくれ
たべっぴん画家。そうとう酒強し。そして、わたしと同じく“オー
バー30s”にして、オヤジキャラちょい入り気味。となれば、気
合わないわけがない。なんつったって、平尾さんたらわたしが地
方出張しているところに電話をかけてくれて、「来週末、『スナッ
かおり』やるんで遊びにきて」なんて飲みの誘いをしてくれちゃ
イカした女子なのです。
あ、「スナックかおり」ってのは、平尾さんが不定期で開いていた
み屋。地元のカフェを借りて、彼女が一日ママをするという素敵
試みだったのですが、残念ながら現在はお休み中。わたしが平尾
んに出逢ったのは、このスナックかおりがきっかけだったんです
(呑
みの席で仕事相手をみつけること多し。酒も大切なビジネスな
だ!)

平尾さんとブラボー★隊のS先輩と女三人で、まずはガード下を歩
いてよさげな店を物色。ほっほー、大衆酒場風の立ち呑みからもく
もく煙があがる焼鳥屋、ロンドンのパブのようなバー……。魅惑的
な店が並んでいます。さてさて、どこにしようか。って悩んでいた
ら、ヨン様があのニヤケ顔で(ファンの方失礼!)が「こっちへお
いで」と手招きしている。ってもちろん実物ではなく、でっかいポ
スターがひと際目立っていただけのこと。ガード下の韓国料理。面
白いじゃない。ここから行ってみよー♪


ヨン様がヨンでまっせ〜
(なんつって)
韓流ブームにのって、
 つまみに行ってみた「オモニ」

ヨン様が呼んでいたからといって、ご婦人方が大挙しているわけじ
ゃありません(当然)。店内はグレーや紺のスーツを着たサラリー
ンばかり。この日、待ち合わせが20時30分と遅かったことも
あり、
お客さんたちはすでにいい気分のご様子。みなさん、ほんの
り赤い
顔して楽しそうに呑んでいます。
こじんまりとした店内の壁にはメニューがびっしり。見れば、おで
んのメニューも豊富。ここは純粋な韓国料理店ではないようですね。

最初はビールで乾杯。頼んだのは、トッポッキー(600円)、
チヂミ
(600円)、トーフチゲ(800円)。生ビールが380
円ですから、価
格設定は比較的良心的です。

そうそう、わたしの店選びの基準のひとつにビールの値段がある。
ブラボー隊マーケティング調査部によると、最近は生ビール600
というのが東京相場のようですが、高い! わたしは600円も
ぶん
取るような野暮な飲み屋には行きません。ビールは高いが、料
理は
安いとか、とびきり美味しいというお店がなかにはある。実際、
ういう店もいくつか知っている。でもでも、20代をビール党で
なら
してきたわたしにとって、「ビールで粗利を稼ごう♪」という
姿勢が、
その店に入る足を重くさせるのだ。
だって、生ビールを5杯飲んだら(平均飲酒量)それだけで300
円ですよ。場合によっては料理よりも酒代のほうが高くついちゃ
じゃない。それは、わたしの『酒道』に反すること。だから生ビ
ルの値段は高くとも500円までと決めているのです。
これはあくまでも個人的な基準。ビールをこよなく愛する人間だか
らこそ、そこは譲っちゃいけないのです。高ければいいというもん
ではない。物事には「適性」というものがあるんですから。

おっといけねぇ。うだうだとご託を並べてしまった。さぁさ神田ガ
ード下『オモニ』に戻りましょ。

イラストレーターの平尾さんが選んだトッポッキーは、韓国の屋台
メニューのなかでも人気のおつまみで、韓国のおもちを、キャベツ
や卵などと一緒にコチュジャンソースでからめたもの。好んでおも
ちを食べないわたしにとっては(おなかがふくらんで酒が飲めなく
なるのがイヤという男子的理由)、初味見。見かけは細長いソーセ
ジのようですが、食べてみるとコチュジャン(唐辛子味噌)にあ
ているので味は甘辛。日本のおもちのようにドロッとしていない
で、ソースとのからみあいは意外と少ない。んー、もう少しおも
に味が染みてたほうがわたし好みかな。

全体的に甘めの味付けが、この店のオモニの味なのでしょう。オモ
ニって、要するに日本でいう「おふくろの味」。同じ料理でも、家
によって味つけや入る具が少しずつ違うように、つくってくれる
“オ
モニ”によって、韓国料理も味はさまざま。辛いモノが苦手な
ひと
にもおすすめのお店。逆に、口から火が出るくらいに辛いもの
が好
きなひとにはちょっともの足りないかもしれません。マイ一味
唐辛
子を持参のうえ、のぞまれたし!

店を出る前に、厨房でてきぱき働くおかあさんに声をかけるが日本
語をまったく解さないらしい。かわりにバイトの男の子に通訳して
もらって話をきいたら、材料は基本的にぜんぶおかあさんが韓国で
仕入れているらしい。本場韓国の家庭の味ってわけだ。



コリアンの定番、
トッポッキーとチゲ鍋

本場の味を届けてくれるおかあさんと、シャイな働き者お兄さん。



味     ★★★
      可もなく不可もなく、といったところかな
お酒    ★★★
      種類はある。マッコリがボトルしかないのが残念
ひとり飲み ★★★ 
      数人でいったほうが楽しいかもね
雰囲気   ★★★
      注文受けが手際よく料理もサッと出てくるのがナイス
女子的気軽 ★★★★
      本場韓国の屋台に女子同士で行く気分で




韓国風居酒屋「オモニ」
日本の居酒屋文化と韓流の融合した
看板が目印。
JR神田駅東口より徒歩1分。
営業/17時〜24時、日・祝休。
03-3254-7867

 平尾香さんが描いてくれた思い出の一枚。


ワイン通のご主人のハートを
 ぎゅっとつかんじゃった「があどした」

おなかが落ち着いたところで、次に向かうのはどこじゃらほ。高架
下の個性豊かな店たちを横目に、しばらく夜風にふかれて歩くオー
バー30s。生ビール3杯ごときじゃ顔色ひとつ変えない姉さん方
に、
“同類の香り”をぷんぷん感じて「えー、酒や」とよひ気分の
わた
し。
最近「この人、きっとわたしと似てる」とか「価値観とか好きなも
のが近いんじゃないかな?」と思うひとに出逢う確率が高い。こな
いだは、ちょくちょく顔を出す近所の居酒屋で若い女子に声をかけ
られ意気投合。いまじゃふたりでデートしちゃうくらいの仲良しで
す。そのことを別の女子友に話すと、「女の子にナンパされてる場
じゃないっす」と一蹴。あい、確かにそのとおり。こんな毎日じ
ゃ、
嫁にはいけねぇな。ピピッとくるのは女子ばかりで、男性に対
する
わたしのアンテナは錆びついてしまったんだろうか……30秒
だけ
悶々タイム。

と、スナックが立ち並ぶ場末な雰囲気の通りに出る。3人とも「ほ
っほー」と感心の声をあげる。「この通り沿いの店だったら、きっ
サプライズがありますよ」「だね」
嫁問題は、また考えるとして「いい店」探しに専念しよう。
スナックっぽいお店の看板の間に挟まれて、『ワイン居酒屋 があ
した』という店を発見。窓はなく、灰色の扉が入口。雑居ビルの
室的な雰囲気が漂う。店内が見えないのがちょい不安でしたが、
「ワ
イン居酒屋」というからには、カジュアルなお店なのでしょう、
全員一致でこの店に入ることに。

重たい扉をあけると、ひと癖ありそうなご主人がワイングラスを磨
いている。優雅なクラシックが流れ、ちょっと外からは想像がつか
ない空間。10人も座ればいっぱいになってしまいそうな小さな店
で、紳士が二人で談笑している。なんだか、スマートな感じ。さ
きの韓国庶民派とは180度ちがう雰囲気です。三人ともいささ
か緊
張しながら席につく。ワインリストをまじまじと眺めていたS
先輩、
「やすーい!」と感心している様子。S先輩は、日本酒に詳
しい頼
もしい姉御ですが、ワイン通でもあったのでした。「×××
×が3000
円? えーっ」などとひとりコーフンしている。酒の
銘柄が覚えら
れないわたしは、値段を見ても安いのか高いのかわか
らず、彼女に
選んでもらいました。「ブルネロ・ディ・モンタルチ
ーノ」(7000
円)。舌の噛みそうな名前ですが、S先輩による
と「ほかの店で飲ん
だら1万円以上する」とのこと。ってことは、
ずいぶんなコストパ
フォーマンスだ。つまみは、チーズの盛り合わ
せ、黒豚の紅茶煮、
ガーリックトーストなどいかにもな感じから、
モツ煮や焼きそばと
いったBグルメもある。一軒目でかなりおなか
いっぱいになってい
たので、ガーリックトーストとチーズをオーダ
ー。


この怪しげな雰囲気に
「があどした」発見!


この扉、開けるときには
ちょいと勇気がいりました


フレッシュバターたっぷり。この分厚さがうれしいガーリックトースト

S先輩が「ブルネロをボトルでください」と言った瞬間、白髪の紳
士然としたご主人の目がきらり、光ったのをわたしは見逃しません
でしたよ!「お客さん、お目が高いね」てなところだったと思うの
ですが、そのあとがめくるめくサービスの連続で、3人で顔を見合
わせて含み笑いしちゃったくらいでした。
だって、となりのお客さんが残していったワイン、ほとんど残って
るのに「ほい」って気軽に全部くれちゃうし、これまた高級なグラ
ッパ(こりが火がついちゃいそうなくらいに強い!)を惜しげもな
く、どばどばとついでくれちゃうし、「ええええっ。いーんですか
?」
というくらい気前がよいんですもの。
あれはたぶん「ブルネロ」のチカラだと思う。もしかしたら、“え
女”が3人でやってきたからかもしれないけれどね。

ひと癖ありそだと思っていた紳士ご主人、話してみると親切でチャ
ーミング。「いらっしゃいませ」とロゴの入った真っ赤のエプロン
白髪によく似合ってる。出されたチーズもガーリックトーストも、
ブルネロによく合って美味しかったわん♪

さてブルネロ。ソムリエの方であれば「スパイス、ドライなチェリ
ー、なめし皮、紅茶など、力強くどっしりとした香り。アタックは
なめらかで酸はいくぶん控えめに感じるが骨格はしっかりとしてい
て、とても豊かなタンニン。伝統的で重厚な味わい、うんぬんかん
ぬん」とでも表現してくれるのでしょうが、あたいは「おいしい」
か「いまいち」レベルの貧弱な語彙しかもちあわせていないので、
S先輩に味わいを表現していただきました。「こほん。そうね、イ
リアワインというと生っぽい若さが特徴。でもブルネロはフレッ
ュな味わいを保ちつつ、より洗練されたエレガントな風味が魅力
ね」

んー、先輩さすが言うことが違います。
兵庫出身だけど、「男子ウケがいいから」と笑いながら、京ことば
話す平尾さんも、見ていて気持ちいいぐらいによく飲んでいらっ
ゃいました。ゆっくり味わおうと思っていたブルネロ君はすいす
飲めてしまい、一気にボトルは空に。他人のワインもしっかりカ
にし、締めにグラッパをあおり、ゴトンゴトンと頭の上を通る電
の音を聴きながら、神田「があどした」の夜は更けてゆくのでし
……。


ウワサの「ブルネロ・ディ・モンタルチーノ」(7000円)
小売価格並の安さ!

「グラッパも飲んできな」
気前のいいご主人。



味     ★★★
      こんどは1軒目に寄りたい。お料理もこだわりありそう
お酒    ★★★★★
      厳選されたワインリストとコストパフォーマンスに
ひとり飲み ★★★★★ 
      ご主人ともっと話したかったな
雰囲気   ★★★★
      この狭すぎない空間が好きです
女子的気軽 ★★★
      あの扉を開けられたら、あなたも上級者




ワイン居酒屋
「があどした」
JR神田駅より徒歩5分。
肉のハナマサへ向かう手前
営業/17時〜24時、日・祝休。
03-3246-2582





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