◆falling in love。恋に落ちてしまいました

のっけに一句。
  秋の空 よひ歳女の 溜息ゆれる

どうやら恋をしてしまったようです。お相手は、気っ風がよくて義
理人情に厚い、男の中の男。はじめて会ったその日から、心を射抜
かれてしまいました。恋い焦がれて、こんなに熱い恋、何年ぶりか
しら……。
って、わたしの新しい恋の相手、それが葛飾区の注目エリア「立石」
なのでした。
立石は、あまりにも素敵な店が多すぎるところなので、今回は趣向
をかえて「立石はしご酒ツアー」と題して紹介したいと思います。

恋は、突然やってくるもの。出会いは、日本酒愛好家の営業男子K
くんのひと言でした。
「ね、立石行ったことある? 好きそうな店ぎょうさんあるで」
(決
してKくんは関西人ではない)
立石? 聞いたことのないマニアックな地名に胸は高鳴るばかり。
「わたしを立石に連れてって〜」(寒いネタ?)

いざ立石へ。東京メトロ押上駅から京成押上線に乗り換え、荒川を
越えた4つめ。乗り慣れない電車、見慣れない景色に、ちょっとし
た小旅行気分になりながら、改札を出る。家路を急ぐ人々の流れに
押されるように階段をおりると、どこからともなく漂ってくる揚げ
もののよひかほり……。
「おー、すばらしいじゃない」
おもわず感嘆の声をあげてしまいましたが、それぐらい駅前の風景
が魅惑的だったんです。揚げたてサックサクのコロッケを売る肉屋
さん、安くてボリュームたっぷりのお総菜屋さん、1本50円の焼
き鳥屋さん、ぷりぷりがおいしそうな練りもの屋さん……。まるで
古き良き昭和の時代にタイムスリップしたかのような商店が立ち並
んでいます。宵闇せまる午後6時。今晩のおかずを買い求める主婦
や背広姿のおじさんにまじり、商店街を歩いていたら、胸のあたり
がたまらなくきゅーんとなるじゃない。懐かしいとも郷愁とも違う、
ホントに恋しちゃったときの、あの感覚。そう、それが、立石ラヴ
ァーズのはじまりだったのです。

営業Kくんは、立石ラヴァーズの先輩。自宅が近いわけではないの
に、休日の昼間から通い詰めている筋金入りなのです。彼のナビゲ
ートにより、まずはお鮨屋さんから。
「ここの鮨、激ウマ、激安よ」。Kくんが、水を得た魚のように嬉
とした顔で言う。会社にいるときと、全然違うじゃないか(笑)


下町の夕暮れに、燦然と輝く
「仲見世商店街」入口看板。
もう高級店なんか行かないもんね、の「栄寿司」

駅の階段をおりてすぐ右に曲がり、「仲見世商店街」のほぼ入口に
る「栄寿司」は、10人も入ればいっぱいになるカウンターだけ
の立
ち喰い鮨屋。お鮨の立ち喰い?と思うかもしれませんが、江戸
時代
は屋台の立ち喰い形式だったんですよ、お鮨って。そう考える
と、
ファストフードの元祖ともいえるかもしれませんね。

まずはヒカリモノから。しまあじ、さんま、さば。あいよっ!威勢
のいい声とともに出された魚たちはてらてらに光り輝いています。
でっぷりと太っていて見るからに旨そう。しかも、100円とは思
えぬ(しまあじは200円)ネタの大きさ。その気前のよさにまず
驚き。口に含むと、瞬間にネタの鮮度がわかる味。しゃりはほのか
にあたたかく、ふわりと握られている。うまい、本気で美味しい!
どんなに美味しくても、値段が高ければ当たり前。サプライズもな
いわけですが、栄寿司は、ネタによって、100円、200円、3
00円と明朗会計なうえに、ホントに安い。ここのお鮨を知っちゃ
ったら、高級店なんか行くのがアホらしくなります。

ネタを酢でしめたり、煮含めたり“仕事”を施すのが「江戸前寿司」
の特徴。栄寿司のご主人の仕事っぷりは、見事。素材の味をそのま
ま楽しむのもいいけど、丁寧な仕事が施された江戸前ならではの味
を堪能するなら、煮いかや穴子、とこぶしなどがおすすめ。私たち
は、Kくんのイチ押し、煮いかをいただくことに。これがまた、煮
加減といい甘さ加減といい絶妙なんだな。ただ者じゃないね、ご主
人。ひとり6貫ずつ食べて、ビール2本飲んで、締めて2625円。
どうよ、この安さ。感動でしょ?
栄寿司は、昭和33年に創業。先代は、「気軽に好きなだけ好きな
タを気取らずに食べられる店」を目指したそうですが、まさに二
目は、その意志を継承されていると思いました。うん。ありがと
う、
二代目!

注意:営業時間は12時〜20時ですが、おひさまの高いうちに行
ないと、いいネタはなくなっちゃいますからあしからず。



脂がのっていてうまそーなヒカリモノたち

若い二代目が握る鮨は天下一品! 長居は野暮ってもんだ

栄寿司
京成 立石駅より徒歩2分。
仲見世商店街入口
営業/12時〜20時、木曜休。
100円(まぐろ、かつお、鯛、こはだ、いか、たこ、はまち、煮ほたて、いわし、さばなど)
200円(中トロ、生ほたて、しまあじ、あなご、煮はまぐり、ひらめ、赤貝など)
300円(大トロ、あわび、うになど)

どうしてこんなに安くてうまいの?
疑問が深まる「モツ焼きミツワ」


「ちょっと、やばいよ立石。はまりそう」。幸せでゆるんだ顔がし
らない私。「だろ?だろ?」。Kくんもおんなじ顔。カメラ担当
のS
先輩もにっこにこ。ほくほく幸せな3人が次に向かった店は、
「もつ
焼きミツワ」。同じく仲見世商店街の中にあります。


裸電球が懐かしい店内は、すでに満席。外にビールケースをひっく
り返してつくった簡易テーブルもほぼ満席の盛況ぶり。お客さんの
大半は、このへんに住んでいる常連さんのよう。前にKくんに連れ
てきてもらったときも思ったけど、立石の呑み屋には、おやじばか
りじゃなく年齢を重ねたマダムたちも集っている。そこが、ほかの
立ち呑み屋とは違うところね。

立石ラヴァーズ1号のKくんの流儀にならい、酒は“ボール”を注
文。この店のボールは焼酎を炭酸で割ったもので、無色透明。味は、
焼酎のソー
ダ割とかわらない。お値段はというと、200円!!
なぜ“ボール”
と呼ぶのかは、Kくんも「知らん」だって。ハイボ
ールのボールか
なぁ。だれか知っている人教えてくださーい。

サシ盛り(500円)、レバー、ハツのもつ焼き(もつ焼きはどれ
も2
本で170円)をたのむ。「おー」。ドンとおかれた品々を見
て、再び
驚きの声をあげてしまった。マグロは分厚いわ、モツはで
かいわ。
ほいで、この値段。いったいぜんたいこの街は、どうしち
ゃったっ
ていうの? 不思議は深まるばかり。都心の物価の高さに
慣れてし
まった、己の経済観念を改めねばならぬとかたく誓った瞬
間でした。
そして、食べれば、おいしいわけよ。マグロも新鮮だし、
モツもぷ
りぷりのコリコリ。
「ここさ、5時開店なんだけど、その時間に来るとうなぎの“くり
から焼き”が食べられるんだよ。こいつがまたうまいの」とKくん。
キミも食いしん坊仲間だな(笑)

オープンエアだけど、商店街には屋根があるので雨を気にせずに飲
めるのはありがたい。大勢の喧噪のなかで、ねじりはちまきのご主
人が焼くモツの煙をかぶりながら、酒を呑む。実に、すばらしい雰
囲気じゃありませんか。
1時間弱滞在。ボールを3杯ずつ呑んで2440円。またしても1
1000円以下。どうもありがとう、ミツワさん!


この“ボール”を呑む率高いのも、立石ならではだね

新鮮豪快なモツ焼き。
2本で170円。どうだ!



もつ焼きミツワ
京成 立石駅より徒歩3分。
仲見世商店街の中。
営業/17時〜23時、日曜休。
酎ハイ(300円)、ボール(200円)、モツ焼き(どれも2本170円)、煮込み(250円)、刺身盛り合わせ(500円)など

端から全部注文したくなる、文句なしの美味しさ。「関西風串揚げ100円ショップ」


素晴らしき哉、立石はしご酒。
続いて訪れたのは、「串揚げ100円ショップ」。冗談のような名
前が
素敵じゃない。
「へい、らっしゃい!」気合いの入ったメンズ2人に迎え入れられ
る。入ってみると、店内はけっこう広い。コンクリートの床に、カ
ウンターだけの立ち呑みスタイル。大阪でよく見かけるお店だわね。
串揚げならビール(350円)よと、本日3度目の乾杯。壁には豊
なメニューがずらりと並び、目移りしちゃいます。


まずはお髭がイカすお兄さん(色黒でサーフィンでもやっていそう
な雰囲気なので、勝手にサーフ兄と呼びます)おすすめの、トマト
チーズを。「がってんだ!」。どこまでも威勢のいいサーフ兄が接
担当で、もうひとりの兄貴(彼にかかれば、どんな食材も最高の
揚げに変身する。尊敬の念を込めて、マイスター兄と呼びます)
が、
揚げ方担当のようです。

冷蔵庫から下処理をした串を取り出し、衣をつけて、油に投入。大
阪の串揚げは、揚げ置きしている店もあるけれど、こちらはすべて
注文を受けてから揚げるので、どれも揚げたての熱々をいただけま
す。


トマトの果汁がじゅわり、チーズはとろ〜り。必食ですよ!

「姫、トマトはなにもつけずに食べてな」
姫? そうこの店では女子はみんな(なの? サーフ兄)“姫”と
ばれるらしい。私はそんなキャラではないので、ちょっとこそば
い(笑)。揚げたトマトってどんな味? 興味津々でかぷっとい
くと、
トマトの甘みととろけるチーズのハーモニー、そして巻かれ
た海苔
の香りが加わって、感動の美味しさ。
最近、食べ物で感動することがめっきりなかったのですが、このト
マトチーズには、やられちゃいましたね。予想がつく味には感動し
なくなってしまった私ですが、このトマトチーズにはサプライズが
ある。感動とは、想像をはるかに越えたところにあるのだ。……な
んて、哲学的になってみたりして。

続いて、豚の紅生姜巻きを。これまた、たまらぬ旨さ。ジューシー
な肉汁と紅生姜の塩味との出会い。ビールがすすむ〜。
お次は、こんにゃく、さといも、だいこんと和なチョイス。サクサ
クの薄衣をまとったこんにゃくは、甘く味がつけられていて初めて
知る味。酎ハイ(200円)にかえて、ジョッキをぐびぐび。だい
ん、さといもは、塩を軽くふっていただく。ホクホクにやわらか
く、
素材のもつ甘さが素直に口いっぱいにひろがる。ぐびぐびぐび。
ただ
もう、うなずき、杯を重ねるブラボー★隊でありました。

このうまさで、串揚げすべて100円均一ですよ(ただし、2本ず
つの注文なのであしからず)。ここに来る前に2
軒はしごして、お
なかはよい加減に満たされていたというのに、ど
れを食べても美味
しい串揚げと、サーフ兄の「がってんだ!」の小
気味よい受け答え
がやみつきになり、串の数はどんどん増える一方。
メニューは20
種以上あって、端から全部食べてみた〜い、と思っ
てしまいます。



どれを食べても、マジ旨いです。写真はこんにゃく、さといも、大根、じゃがベーコン

立ち呑み屋には、その店独特の流儀がある。マイスター兄とサーフ
兄の店の流儀は3つ。ひとつは、呑み食べ終えたグラスと串は、そ
のままカウンターに並べておく。これがお勘定の計算になるのだ。
まわりを見渡すと、ジョッキを10個以上並べている強者も。ふた
つめは、ソースにつけて食べる串の場合、二度づけは厳禁。キャベ
ツも同様。これは衛生上の理由だわね。それともうひとつ。この店
には、灰皿がない。かといって禁煙ではなく、吸い殻はコンクリー
ト床にポイと捨てればそれでOK。大雑把というかワイルド。

いやー、大満足。串揚げ6本ずつと、お酒3杯で4050円。これ
たひとり1350円!! 。どうもありがとう、兄貴たち。またく
るから
ね〜。

串揚げショップを出たときには、夜も更けて宵闇に浮かぶ立石の赤
提灯たちが、われらを呼んでいます。「すばらしいでしょ、立石。
の街の奥深さは一回来ただけじゃわからないよ」と、お国自慢を
るKくんは、誇らしげに言う。「じゃ、もう一軒行こう!」「い
いね
ぇ」。かくして立石はしご酒ツアーは、まだまだ続いたのでし
た、マ
ル。


串揚げ100円ショップ
京成立石駅より徒歩2分。
線路沿いの提灯が目印。
営業/15時〜22時半、火曜休。
ビール(350円)、酎ハイ(200円)、日本酒(350円)、串揚げ(すべて100円。注文は2本より)



味     ★★★★★
      どの店も文句なしに五つ星。しかも安い!エライ!
お酒    ★★★★
      安いのよ、お酒もさ。立石に来たらぜひボールを体験してね
ひとり飲み ★★★★★ 
      むしろひとりで行くべきかもしれませぬ
雰囲気   ★★★★★
      もー最高、立石! 結婚して♪
女子的気軽 ★★★
      かなり上級者向けではありますが、
      女子のひとり飲み率も高かったです






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