中山庸子連載第16回
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新しい年に「デビュー」を目指して


 「エネルギーは使えば使うほど湧いてくる」
 この言葉を早々と、2007年の自分のモットーにしようと、新しい
グリーンのカバーの「いいこと日記」(『書き込み式「いいこと日
記」2007年版』マガジンハウス刊)の最初のページに書きとめ

たところです。
 ここ数年、気分や体調のアップダウンが激しい日々が続いていま
した。原稿に書くことや取材を受けているときの話などは何とか
「威勢のいい自分」を演じていたけれど、基本的には「こもり系」
の不活発な日々が続いていました。朝おきると、すでに疲れている
……という残念な1日の始まり方がほとんどでした。
 それでも数日間に渡って気力や意欲が回復し(ようやく長くて暗
いトンネルを抜けたか!) とぬか喜びをしたこともあったけれど、
じきに次のトンネルに入ってしまう……を繰り返すという感じだっ
たのです。
 それが2006年も「まとめ」に近づいてきた11月のある朝、ふと自
分の身体が動きたがっていることに気づきました。朝食の準備はも
ちろん、蒲団を抜け出すのも億劫、朝刊を郵便受けまで取りに行く
のもしんどい自分にすっかり慣れていたので「あれっ?」と呟いて
しまったくらいでした。
 ここでまたあれこれ考えすぎて、せっかく「動きたがっている」
自分の行動にブレーキをかけてしまっては勿体ないので、パジャマ
の上にウィンドブレーカーの上下を着込み、すぐに外に出てみるこ
とにしたのです。
 可燃ごみの収集日でしたから、まずはそれを指定の場所に出し、
すぐ近くの墓地の参道をやや早歩き状態で歩きはじめました。これ
だけでも久々のことで充分に気分が良かったのですが、私の脇を通
りすぎていくジョギングする人たちを見て、何だか無性に走ってみ
たい気分に。
 テニスコートでボールを追って瞬間的に走ることはあったけれど、
ジョギングする意欲もエネルギーもここ何年全く感じたことがなか
ったのです。軽快に私を追い抜いていった数人の人たちのやや後方
からおそるおそるついていったら、これが意外にちゃんと走れたん
ですね。このときは本当に嬉しかったです。
 家に帰ってからも、エネルギーが湧いてきて、朝食の準備とお弁
当作りと、洗濯を一気にすませることができました。
 それから一ヶ月と半分。雨の日や特に忙しいとき以外、たいてい
週に四から五回のペースで走っています。この間少しずつ走り続け
られる距離が伸び、新しい年には墓地の参道から神宮外苑の銀杏並
木へジョギングコースを変えるつもり。
 私は、これを勝手に「銀杏並木デビュー」と称しているのです。
 今走っている墓地周辺にも、犬を散歩させている人やウォーキン
グ、ジョギング中の人もいますが、何と言っても銀杏並木から絵画
館の一帯は、本格的な走りをしている人も多く、以前マラソンラン
ナーがものすごいスピードで走っていくのを見たこともあったし、
クリントン元大統領が現役(?) の頃、SPを従えて走っている姿
を目撃したこともありました。
 そういうわけで、私にとってこの銀杏並木を颯爽と走る自分こそ
が、2007年の「こうありたいカッコいい姿」ということになのです。
 ここ一ヶ月ちょっとで実感したのが、冒頭の「エネルギーは使え
ば使うほど湧いてくる」ということ。完全に冷め切っていたエンジ
ンが始動し、(私の身体という)車全体があたたまり、いつでもス
ートできる機能を取り戻したのでしょう。すでに相当に古い型番
車ではありますが、走らせているおかげで燃費も少々ですがよく
っている感じがします。
 こんなことを書いているうちに、ある本で「たいていのエッセイ
は筆者の自慢話である」という一文を読んだことを思い出しました。
確かにその通りと思うものの、自慢話にも可愛げのあるのとそうで
ないのがあるから、せめて「愛される自慢」にしたいな、と。
こちらは新しい年の仕事上の目標ということになるでしょうか。
 ちなみに、この「銀杏並木デビュー」の話を友人にしたら、彼女
は「ピアニスト・デビュー」したいとのこと。私もコミックからの
ファンでしたが、この秋・冬にドラマ化されて人気を博した「のだ
めカンタービレ」ののだめこと野田恵ちゃんの影響で、がぜん「や
る気」になっているようです。
 新しい年、あなたも何かに「デビュー」してみませんか?
 
自分の、そして日々の輝きもグングン増してくると思いますよ。






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