【第2話】
以前、私があるセミナーに参加した時、隣の席でお会いした東京の住宅会社の須藤社長(仮名)の話です。
須藤社長の会社は、事務員2人と設計士、社長の4人体制。営業マンはなし。しかも坪60〜80万円もする住宅を売っている会社です。
「そんな商品を営業マンなしで、一体どうやって売っているんですか?」
その営業方法というのが、「ニュースレター」だというんです。
ニュースレターとは、お客さんとの親密な関係作りを紙面上で築くための、コミュニケーションツールのこと。そこには、商品に関する情報や、暮らしのお役立ち情報、社長や社員の近況といった内容が書かれています。
ニュースレターは、定期的に出すことで、「へぇ〜、この社長さん、こんな苦労をして会社をやってきたんだ」とお客さんに社長や社員の人間性を感じてもらい、親近感を持ってもらうためのものです。
お客さんとの距離を近くして、「商品を買おうかな……」と思ったときに、お客さんに声をかけてもらいやすくするための環境をつくりだすのです。つまり、ニュースレターは商売人にとって、万が一、記憶喪失になったとしても絶対に忘れてはならない、強力なコミュニケーションツールなのです。
須藤社長の会社では、年に2回、住宅展示場でイベント開催のチラシを撒きます。そこで粗品のプレゼントと引き換えに、住所と名前を記入してもらうそうです。こうして集めた見込み客に、ニュースレターを送るというのです。
「へぇ〜。ニュースレターで、家が売れてしまうんですね」
「いや、売れないな」
自分から、「ニュースレターで売っている」といっておきながら、舌の根も乾かないうちに、「売れない」といい出す。
このおっさん、一体何がいいたいんだ……?
私は怒りをおさえて聞きました。
「どういうことですか?」
「3年間やらなきゃ 、結果は出ないってことさ」
――納得です。
ニュースレターを2、3回送っただけで、何千万円もする家がバンバン売れてしまったら、みんな億万長者になってしまいます。そんなことはあり得ない話。
営業マンがいなくても、コンスタントに家が売れ続けているというのは、コツコツ3年間、毎月欠かすことなく、ニュースレターを出し続けてきたことの成果です。3年間もやり続けてきて初めて、お客さんの気持ちが動き出すんですね。
話は変わりますが昨年、愛知県のリフォーム会社、佐藤社長(仮名)から、営業戦略の相談を受けたことがあります。
その佐藤社長は、ニュースレターをなんと、8年間もOB客に配り続けているというのです。継続は力なりとはいいますが、なかなかどうしてこれができないのが現実です。
さすが、実践者!
佐藤社長のような強者がいるんですね、この世の中。
この話を聞いただけで、リピートや紹介などが多い会社というのがよくわかります。佐藤社長のハリのある声からしても、羽振りのよさがうかがえます。
が、しかし、ここで私は、大きな疑問を感じました。
「こんな実践者である佐藤社長がなぜ、私に営業戦略の相談を……?」
そう思って、佐藤社長にうかがってみました。
すると、様子が一変。肩を落として、ため息混じりにおっしゃいました。
「ところが、リピート率が低いんです」
「えぇ? 8年間も毎月毎月ニースレターを欠かさず配っているのに?」
こ、こんなことって、あるんでしょうか?
もし、これが本当だとしたら、私が今まで積み上げてきた常識を、全否定されてしまうのと同じこと。私は一瞬、言葉を失いかけました。
しかし、ここでひるんでしまっては、高確率セールス構築士の名が廃る。私は落ち着きを装い、問題解決に結びつけるための質問を頭のなかで探しました。
「ニュースレターを配っているのは、OB客」
「毎月必ず配っている」
「仕事は、まあまあの内容」
「それなのにリピートが少ない……」
こんな感じで頭がグルグル回るだけで、話すことが見つかりません。
「そのニュースレター、今ファックスで送ってもらえませんか?」
苦し紛れに出てきたこの言葉。
しかしなかなかどうして、的を射た質問ではありませんか。やはり高確率セールス構築士。捨てたもんじゃありません。
しかし、その余韻にひたっていられたのもつかの間。ファックスから送られてきたニュースレターを見て、私は叫びました。
「これだ!」
8年間もニュースレターを配り続けてきたにも関わらず、リピートがほとんどないという、このナゾの答えが分かったのです。
それは……?