関根健夫 著者略歴


Q7 「様」にするか、「先生」が正しいのか? 敬称の基準は何?

 お得意様に向けた広報誌を刊行することになりました。そこで、かねてから興味を持っていたコンサルタントの方に、執筆してもらおうと考えました。その方は何冊か著作もあるということで、すんなりと許可をもらえたのですが、依頼の手紙を書こうとしたところで悩んでしまいました。依頼文自体は、いろいろ参照してすぐにできました。しかし、そのコンサルタントの方の敬称をどうつけるかがわからなかったのです。
 一般に「様」をつけますが、代議士や弁護士、医者、教師などには「先生」と敬称をつけるのが普通です。それ以外にも、作家や著述家などにも「先生」にするものだと認識しているのですが、このケースはどちらにすべきなのでしょうか?

回答
ケース・バイ・ケースだが、3つの尊称を使い分けるのが基本

 「尊称」に関する基準は、あるともいえますし、ないともいえます。

 言葉のルールは慣習によって成り立っている面がありますから、法律や決まりで規制できるものでもないわけです。
 例えば、人の名前に「様」をつけるのは本来的には「文語体」とされています。つまり手紙(文章)を書くときにつかう敬語です。
 しかし、今ではホテル、結婚式場、病院までも「お客様」「新郎様」「新婦様」「患者様」と呼びかけています。その言葉づかいは「口語体」ですから、本来は間違いです。
 さらに、結婚式などでは当人の親を「ご尊父様」などと呼ぶこともあます。「ご」「尊父」「様」と、二重敬語どころか三重敬語で、これもまた本来は間違いです。
  けれども、これくらいの誤った使い方は今現在、普通のこと。むしろ、より丁寧である、と積極的に使っているくらいです。

 つまり、言葉に基準はあるのですが、それは絶対ではありません。まずは、そこのところを押さえておくことが必要です。

 そのうえで、本題に入りましょう。
「様」にするか「殿」や「先生」にするかは、おおむね次のように考えればよいと思います。

 名前につける尊称は、「様」がもっとも一般的で汎用性が高いといえます。
 多くの場合これで通用します。
「○○様」

 役職をつけた場合は「殿」をつけます。
「殿」と聞くと相手方の権威を認めたかたちになります。
「○○部長殿」「○○代議士殿」

 相手方が俗に「先生」と呼ばれる職についている場合に「先生」を付ければよいでしょう。具体的には教師、学者、医者、保育士、税理士、弁護士、議員、占い師、作家などといった職業の方たちです。
 また、こちらが尊敬の念を込める場合にも「先生」がつかわれます。作家などは役職ではありませんから「○○作家先生」とはなりません。「○○先生」でよいでしょう。

 繰り返しますが、ここで書いた「敬称」についての決まりも、絶対ではありません。
 たとえば、無理に「先生」とつけることで、相手を愚弄してしまうこともあります。
 相手に不快感を与えない、コミュニケーションをスムーズにするという目的を外さないように心掛けてください。

まとめ「こうでなくてダメ」という決まりはない。受け取る相手がどう感じるか、状況に合うかで判断しよう

Q8 「手書き」がいいとは聞くけれど、下手な字では失礼になるのでは?

 依頼や挨拶、お礼状などは、どうしても手書きでなくてはだめなのでしょうか?
 講演依頼の手紙を書くように、と上司から指示を受けたのですが、私はどうにも字が下手なのです。「丁寧に書けばいい」という人もいますが、どれだけ時間をかけてゆっくり書いたとしても、後で読み返してみると我ながらうんざりします。それならば、いっそのことワープロでいいと思うのですが、「手書きの方が心を伝えられるから」といろいろな本で言われているので、すっかり迷ってしまいました。
 ワープロやメールが通常になってきた昨今、無理に下手な字を書くよりきれいな機械の方が失礼にならないと思うのですが、どう考えたらよいのでしょうか?

回答
「会社」「仕事」関係の手紙ならばワープロも可。文字のきれいさは極端でなければ気にしなくていOK

 皆さんは常日頃、ワープロで文章を書く機会が多いのではないでしょうか。プリントされたものは読みやすいですし、書きなおしのできる手軽さがあり、同じものをいくらでも複製できます。
 こういった利点を生かすとなると、「事務的な要素」の濃い、社内文書や書類、レポートなどはワープロが適しているといえます。

 その一方で、手書きには手書きの良さがあります。肉筆のもつあたたかさや、書きなおしが効かないのでていねいさがある、などの点です。
 つまり、ていねいさ、感情(感謝や謝罪、お礼、お願い)をあらわすなどものは、手書きの方が適しているのです。
 したがって、「個人の要素」が濃いもの、たとえば、個人的にお世話になった場合など、特に「個人」から「個人」への礼状などは、たとえ自信がなくても手書きがよいでしょう。
 字の上手下手は問題ではありません。
 一所懸命に書いた行為そのものが、受け手に誠意を感じさせるからです。
 しかし、どうしても自信がないならば、絶対に手書きでなくてはいけない、ということでもありません。また、その文書が「事務的な要素」を含むものであれば、ワープロでもよいと思います。

 今回のご質問の趣旨からいえば、相手は個人か法人かは不明ですが、発信者は明らかに法人組織的、「団体」。つまり、「事務的な要素」があるということです。
 ですからワープロでもよいと思います。

 あえてあなたに指示を出した上司に相談しながら、精一杯書いてみることも経験としてよいと思います。別の次元で考えれば、練習の機会を与えてくれたと思うことも大切ではないでしょうか。

まとめ「事務的な要素」があるならワープロ、「個人的な要素」が濃いなら手書きの方が適している。手書きへの苦手意識を持つよりも、積極的に練習してどちらもこなせるようにしておこう




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